サイバー領域におけるスパイ行為――サイバー安保法案批判として
小倉利丸 Table of Contents 1. はじめに 一般にメディアなどでは能動的サイバー防御法案などと呼ばれることが多い今国会に提出された法案の正式名称は、「重要電子計算機に対する不正な行為による被害の防止に関する法律案 及び重要電子計算機に対する不正な行為による被害の防止に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案」1と長い。以下、これをサイバー安保法案と呼ぶことにする。この法案には、新規の法案と、従来の法律に大幅な修正を加える「整備法」と呼ばれる部分に分けられる。 法案の前提になっているのは、2023年12月に閣議決定された「国家安全保障戦略」など安保3文書2と昨年11月に有識者会議がとりまとめた「サイバー安全保障分野での対応能力の向上に向けた提言」である。3 これらについては既に何度か批判的な言及をしてきている4ので、本稿では、これまでほとんど言及していないが、重要と思われる論点のひとつとして、今回の法案が日本によるスパイ活動の合法化につながるのではないか、という懸念に関連する問題を取り上げる。 法案の背景説明として政府は、以下の論点を挙げている。5 こうした […]