意味と搾取(改訂版)序章
意味と搾取(改訂版) 意味と搾取(改訂版) Table of Contents 1. 序章 1.1. 嘘と欺瞞 最初に退屈で凡庸な喩えから始めたい。 …朝、陽が昇り、一日が始まる。一日の労働や仕事を終え、陽も暮れて一日の終りを迎え、そして暦が一日進み、次の日が巡る。私たちをとりまくこの時間の流れは、太古の昔から決して変ることなく私たちの本源的な生の基盤をなしてきた。たとえ、それが工業化され、あるいはさらにデジタル化された仮想世界の拡がりのなかに私たちの人生が投げこまれようと、この時間の現実は確固として変ることなく存在している。… こうした牧歌的な語り口のなかには、そもそも明らかな嘘と欺瞞がある。こうした語り口は、あたかも今ここにある現実を悠久の人類の歴史と未来永劫続く人類の歩みのなかに位置づけることが可能であって、今ここにある現実を悠久の歴史の正当な嫡子として暗黙のうちに正当化して肯定しようとする保守的で排他的な願望が含まれている。今ここにある現実以外には現実はありえない、という諦念。私たちが経験している時間をあたかも普遍的であるかのように装って受け入れさせようとする暗黙の力が、結果と […]